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彼が彼女を殺すまで
First Story

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第二章 少女はただ涙を流す(6)

 貴崎は力任せに壁を殴る。
 日姫の家ではなく、自分が隠れ家として利用している屋敷だ。
 昨日までの貴崎は浮かれていた。何年もの間区長の信頼を得るために使用人として働き続け、地道に機関とのコネを得ようとしていたところで区長からあんな事実を教えてもらったからだ。
 機関の悪行を記した書類がある。
 貴崎は機関を崩壊させるために全てを尽くしていた。だからこそその話を聞いたとき、貴崎は平常心を保つことさえ難しかった。
 それさえあれば、こんな奴らに媚びへつらう必要もない。
 そう思って貴崎は、その場ですぐに区長を殺害した。
 その妻も殺した後に、区長の書斎に行って書類を探した。だがいくら探したところで例の書類を見つけることは叶わなかった。憎たらしいことに既に処分していたのだろう。
 焦ってあの二人を殺害したのは早計すぎた、と後悔していた貴崎だが、そこで絶望しなかったのは工藤日姫がいたからだ。
 日姫が書類を読んだであろうことは、その落ち着きのなさからすぐに分かった。だとすれば日姫からその内容を吐かせてしまえばいい。
 それでもすぐにそうしなかったのは、なるべく穏便にいきたかったからだ。
 日姫が気丈な心の持ち主であることは貴崎にも分かっていた。なので脅すような真似はせず、慎重に情報を奪おうと思っていたのだ。
 それがこの有様だった。
 日姫を連れ去ったのは機関の人間に違いない。
 解せないのは何故その場で殺さずに連れていったのかということだが、そこは大して重要な問題ではない。
 日姫を連れたということは、貴崎が機関を崩壊させようとしていることも、区長を殺していることも全て知っているというわけだ。
 まさかこんなにすぐにばれるとは思っていなかった。
 そしてばれたのならもうあの家にいるわけにはいかない。
 機関の目的は分からないが、わざわざ連れていったということはまだ日姫は生きているのだろう。それなら何としてでも日姫を取り返して情報を吐かせる必要がある。
「このままでは終わらんぞ……機関め!」
 貴崎は決意を新たに作戦を立て直す。
 絶対にこの国を機関に支配させるわけにはいかないと心に誓って。



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